第ニ食
ぼくとバナナ

 果物の中でも、バナナが群を抜いて二番目に好きなのである。
(いきなり日本語がおかしいのはご容赦いただきたい。)

 バナナの良さは何といっても「ちょうど良い」ことだ。
デザートとしても軽食としても使えるちょうど良い甘さ、手も汚れないちょうど良い持ち手(ヘタの部分)、お値段だってちょうど良い。
まさに自然が育んだ「超便利グッズ」と呼ぶに相応しい。

 とあるアニメ映画の中でも「果物の王様は、果物の王様は……! バナナだった。」という名台詞がある。
これを聞いた小学3年生のぼくは、毎朝「王様」を食べさせてくれる母にとても感謝した。
食卓の真ん中で、バナナにだけ用意されている「バナナ用アルミポールハンガー」は王たる所以なのだ、とその時初めて知った。

 話を戻すと、つまりあらゆる面で「ちょうど良い」立ち回りこそが、バナナを果物界の王様に君臨させたのだろう(きっとバナナも望んでなったわけではない、望まれたのだ!)。

 そんなバナナ。
ぼくは熟す前のかためが好きである。
熟して甘さの増したバナナもおいしいことには違いはないが、弾力のある食感と食べ応えを考えると多少甘さが弱くても断然こちらが好みである。
なんなら少し緑がかって、茎臭さを感じるものがなお良い。
なんとなく南国を感じられる。…気がする。

 以前南インドを放浪していた際、現地の人に「カスタードのようなバナナがあるよ!」と勧められ、食べてみたことがある。
見た目は日本の「モンキーバナナ」のような小ぶりなバナナで、なんと皮がオレンジ色。

 恐る恐る皮をめくってみると、今にも溶け出しそうなくらい柔らかな実がほのかにオレンジめいていた。
ぼくはそいつを、溶け出した夏のアイスキャンディーみたいに一気にかぶりついたのだけど、それはそれは言われた通りカスタード。
その時、感動はしたのだが「良い経験をした」という満足感を代償に「美味しいバナナ」への食欲は満たされなかった。

 ぼくは、結局普通のスーパーで売っている98円の普通のバナナが好きなのだ。
頑張りすぎず、怠けすぎず。欲張りすぎず、遠慮しすぎず。
「ちょうど良い」ぼくでいようと思う。

そんなぼくとバナナのお話。

追伸:
この文章を書いている時に思い出したのだけれど、ぼくの高校一年生のあだ名は「バナナ」だった。(入学時のオリエンテーションで一人だけバナナをてんこ盛り食べていたため)
やっぱ「ちょうど良い」って難しい。
バナナってすごい。