はじめに

思い返せば、ごはんを食べてばかりの人生だ。

お酒の飲めないぼくは、人を誘う時に「飲みに行こう」と言わない(正しくは「言えない」のであるが)。

「ごはん行こう」がぼくと人、世間をつなげてくれるのだ。

 小学生の時、友達の家で「ご飯で遊ばない!」と怒られながら食べた、お茶入りラーメンも。

中学生の時、野球部の試合後に食べた人工甘味料の味がするヤマザキパンも。

高校生の時、友達の失恋話を聞きながら食べたファミレスのグラタンも。

新入社員になって、寮の同期と食べた名前も無い謎の鍋料理も。
そして大人になって妻と作る家庭の味も。
全てが思い出に旨味を与えて、ぼくの心をほっとあたたかくしてくれる。

正直、ごはんの味なんてあんまり覚えてない。
けれどごはんとともに味わった、「ほかほかの時間」は色褪せず残っているものだ。

ぼくと世間をつなげてくれる魔法の時間。

ごはんでつながる「ほかほかな時間」